出身は福岡県福岡市で、目の前に大きな大学のキャンパスがあるような、いわゆる都会の真ん中で育っています。林業に興味を持ったのは大学生の時。ひたすら勉強を頑張って入学したけども、これからの進路に悩んでいて。そんな時に見たのが「林業は究極の働き方改革だ!」というテレビ番組でした。
自然の中で、日が昇ると共に働き、日が沈むと共に家に帰る、もちろん残業もない。しかも日本の7割もの土地が森林に覆われているのであれば、仕事がなくなることもないだろう。これはいいかもしれないと一念発起し、大学を中退してくまもと林業大学校に入学しました。卒業後は熊本県内の林業会社に現場作業者として一度入社し、その中で小国町森林組合を紹介して頂き、今に至ります。この職場に転職するまで、小国町には仕事で数回行った程度で、ほとんど知りませんでした。
最初の配属先は「森林整備課・保育林産班」でした。そこでは、山の現場に入って植林から樹木の伐採、搬出までを行います。林業は他の産業とは異なり、苗の植え付けから伐採(収穫)までの期間がとても長いという特徴があります。一人前の木材となり伐採されるのは最低でも植えてから半世紀後ですから、自分が植えた木を自分で伐ることはほとんどありません。「後世の人が見て恥ずかしくない仕事をする」。伐採した後の切り株を見ると作業者の実力がわかるのだと林業大学校で教わったのですが、この言葉を軸に日々目標を決め、仕事をしていました。自分が伐った山を見た人たちに「これ伐ったやつ、倒す方向へたくそだなあ」とか思われたら嫌だし、きれいな仕事をしたって思ってもらいたい。
体が資本の仕事なのできついことは多いです。真夏の草刈りはとても大変でした。しかし、体を使うだけが林業ではありません。例えば、木は同じように見えても一本一本形が違います。その為、その木の形や性質に合った伐り方を選ぶ必要があります。木を観察し、安全に効率よく作業する方法を考えるのも林業。一般的には認知度の低い仕事ですが、実際に働いてみると、自然の中で作業する開放感や、施業後に見違えるほど綺麗な姿になった山など、自然を相手にするこの仕事でしか味わえないものがたくさんありました。
小国町での暮らしは、内科や整形外科などのかかりつけの病院やスーパーなどに近い町の中心部に住んでいるため、生活に困ることはないです。一緒に引っ越してきた家族は妻と猫三匹。動物病院に通うために近隣の日田市か阿蘇市まで行かなくてはなりませんが、それ以外はすんなりと暮らせる町だという印象でした。
現在は現場での経験を活かし、「一般事務職」として森林経営計画を担当しています。そして森づくりのための苗木の栽培にも携わっています。事務といっても事務所にずっと座っていることはなく、森にまつわることは何でもしないといけない職場で戸惑いもありますが、経験値は上がりますね。来年はスキルアップのために森林施業プランナー試験を受験するつもりです。そして林業の魅力をもっと知ってもらい、認知度を上げるために、林業技術の競技会であるJLC(日本伐木チャンピオンシップ)にも参加したいと考えています。親には驚かれた一念発起でしたが、悩んでいた自分にやってみたいことが浮かぶようになったのは、確かな改革だったかもしれません。